バハムートが墜ちてから1年が経った。
ここは帝都アルケイディス。ラーサー・ファルナス・ソリドールは、元老院との確執、旧ヴェイン派のジャッジ・マスターとの確執に苦労しながらも、アルケイディアの平和を守り続ける皇帝に成長していた。
先日、そんなラーサーの元に一通の手紙が届いた。
その手紙を何度も読み、今日も目を通した。
「お呼びですか」
そこに現れたひとりのジャッジ・マスター。かつてジャッジ・ガブラスが着ていたマントと兜を装備している。
ジャッジは、兜を脱いだ。
ガブラスに成り済まし、アルケイディスに潜り込んでいるバッシュだった。
ラーサーはバッシュに手紙を渡した。
バッシュは、「パンネロより」と書かれたその手紙を懐かしそうに読んだ。
この1年は、あっという間に過ぎていった気がする。ラバナスタはもうすっかり元通り。パパやママが生きていたあの頃のよう。
・・・もちろん、失ったものはたくさんある。でも、過去は捨てて未来だけを見ていきたいと願ってる。
来月は、いよいよアーシェの戴冠式。
アーシェがますます遠い存在になるけど・・・・それは仕方ない。だって女王様なんだから。
戴冠式であなたと再会できるのを楽しみにしてる。
・・・バッシュ小父様はお元気?イヴァリースの平和のためにあなたのもとへいったバッシュ小父様。本当はアーシェのもとへ戻ってほしい。彼女、立場や責任があるから何も言わないけれど・・・
きっと寂しがってるはず。
肝心なことを伝えていなかった。 預かっていたシュトラール号を盗まれちゃったの。メンテナンスしたばかりだったのよ、シュトラール。でも、持ち主が持っていったんだから仕方がないわ。
戴冠式まで、まだたっぷり時間があるから2人に会いに行くんだって ヴァンははりきってる。
もちろん、私も一緒。いよいよ空賊デビューよ
バッシュは手紙を読みながら、バハムートを脱出するシュトラール内での瀕死のガブラスの事を思い出していた。
ガブラスの息は、もう、浅かった。
喋っているのも精一杯なはずなのに、最後の力を振り絞ってバッシュに話しかけた。
「・・・帝国は一枚岩じゃない。頼む、ラーサー様を護ってくれ」
ガブラスの手を握り、バッシュは答えた。
「心配するな、ガブラス。ダルマスカのためでもある」
「それを聞いて安心した。すまない、兄さん」
「兄さん」
その言葉をかみしめ、バッシュは静かに目を閉じた。
そしてガブラスの兜を机の上に置き、ラーサーの隣に立った。
ガブラスの遺言を守る。
だから、バッシュはラバナスタのアーシェの元へは戻らないであろうことを心に決めていた。
その頃、ラバナスタ王宮のバルコニーに立ち、アーシェが遠くに沈むバハムートの残骸を見つめいていた。
彼女の手の中には、バルフレアに渡したはずのラスラとの結婚指輪が握られていた。
シュトラールが盗まれたとき、ガレージに吊り下げられていた飛空石に止められていた手紙の中に同封されていたものだ。
メッセージを読み、ヴァンたちが、アーシェに届けてくれた。
手紙には「クレバドスの秘宝を見つけた ベルベニアで待つ」と書いてあった。裏返すと「追伸:こいつを<王女様>にわたしといてくれ」と追記されていた。
アーシェは1年前に止まったままだった思いが、いっきに蘇った。
手の中の指輪を握りしめ、何かの予感に、心が躍っていた。
ラバナスタの上空に、ヴァンの飛空挺があった。
彼は、手紙に書いてあった通り、バルフレアとフランの待つベルベニアへ向かっていた。
再び、あの、わくわくした冒険を感じながら・・・・
END (Write up 2008 Aug 5 & Remake 2019 Jan 3 for The Zodiac Age)