黄昏の破片が導いた先

エアバイクはガラムサイズ水路に落ちたようだった。ここが水路のどの辺なのかは誰にもわからなかった。
「何が起きたの?浮力が落ちたというより・・・消えた?」つぶやくようにヴィエラが言った。
「もういい、ほっとけ!」苛立つようにヒュムの男が答えた。
ヴァンはヴィエラを近くで見たことがなかった。なんて美しいのだろう。思わず見とれていた。
「で、コソ泥、そんなにヴィエラが珍しいか?」
「ヴァンだ・・・。いや、うん・・・」
「ま、フランみたいに、人間「ヒュム」と組んでいるヴィエラはそういない」
「ええ、空を飛べずに地下を逃げる空賊と同じようにね」フランと呼ばれるヴィエラは答えた。
「空賊?あんたら空賊か!それじゃあ、あんた・・・」
「バルフレアだ」やや呆れた様子で空賊と名乗るバルフレアは言った。
なんの因果か3人は、協力して水路を進むことになった。水路の奥にはヴァンも戦ったことがない魔物が巣食っていたが、バルフレアとフランは、魔物を次々と倒していった。
ヴァンは少し心強くなった。それにバルフレアは、悪い奴ではなさそうだ。


だいぶ奥に進むと、どこかで人の声がした。3人が、声のする方に近づいていくと、水路の上層で、若き女性が帝国兵に囲まれているのを発見した。
助けなければ。ヴァンはとっさに思った。
「飛び降りろ!」ヴァンは叫んだ。
女性は少しためらっていたが、身の危険を感じたのか、下にいるヴァンのもとに飛び降りてきた。
事情はわからないが、ここは帝国兵と一戦交えなければならないようだ。ヴァン、フラン、バルフレアは帝国兵に向かっていった。
帝国兵を倒すと、女性は礼を言い、「アマリア」 と名乗った。
「アマリアか、よろしくな」ヴァンがアマリアに近づくと彼女の側で、ヴァンの手の中にある魔石が光った。
「ほぉ・・・こいつはまた」 バルフレアはますます魔石を欲しそうに言った。ヴァンは、ムキになって拒否した。アマリアも光る魔石に興味を持ったようだが、それが盗んだものだと知ると、あきれ顔でため息をついた。
バルフレアとフランは、アマリアが解放軍の一員であることをすぐに察し、関わることに躊躇していた。しかしヴァンはそんなことおかまいなしにアマリアに、出口まで同行することを提案した。アマリアは憮然としながらも、その方が安全であることは言われなくてもわかっていた。
仲間がひとり増え、魔物を倒しながら4人は水路を先に進み、ようやく出口にさしかかった。
しかし、そこまでだった。王宮への侵入者を追いかけてきた帝国兵たちに取り押さえられ、4人は拘束されてしまったのだ。
帝国兵にとらえられ、連行されるヴァンたちにパンネロが気づいた。パンネロは泣きながらヴァンに近づいてきて、帝国兵たちに取り押さえられた。
ヴァンはパンネロに元気な姿を見せようと、悪態をつくが、帝国兵に殴られ、気を失ってしまった。悲鳴を上げるパンネロに気遣い、バルフレアはヴァンを連れて帰ると、彼女に約束し、涙を吹くようにと、ハンカチを渡した。


  • FF12ストーリー あまい誘惑