ルース魔石鉱

魔石は、いくつかの種類に分けられる。魔法石、飛空石、記憶石などがその代表的なもので、中でも飛空挺は、機体に搭載した飛空石から発生させる浮力で船体を宙に浮かせ、飛行する。この魔石の鉱脈を含む鉱山「魔石鉱」はイヴァリース各地に存在するが、数はそれほど多くない。オンドール候家はこの何百年もの間、イヴァリース有数の魔石鉱を管轄し、強国と渡り合ってきた。しかし、近年のアルケイディア帝国の圧力には抗しきれず、当主ハルム・オンドール4世は2年前から帝国寄りと言われる要因となった。
この日もオンドールは、ビュエルバを訪れていたジャッジ・マスターのギースを魔石鉱に案内しているところだった。
魔石鉱の入口に辿り着いたヴァンたち一行は、その姿を見つけ、息をひそめた。魔石をめぐっての両国の力関係を探りあっているような様子だった。 その様子を見て、ラモンが説明するように話を始めた。
「ビュエルバの侯爵ハルム・オンドール4世。ダルマスカが降伏したとき、中立の立場から 戦後の調停をまとめた方です。 帝国寄りって見られてますね」
バルフレアは、ふぅん、と呟いてラモンに近づいていった。「・・・・よく勉強してらっしゃる。どこのお坊ちゃんかな」
ラモンはバルフレアに道を妨げられたが、その表情は変わらなかった。
「どうだっていいだろう。パンネロが待ってるんだぞ」先ほどからラモンを疑って、歩くスピードが遅くなっているバルフレアに苛立って、ヴァンが口を挟んできた。
「パンネロさんって?」ラモンが興味深く耳を傾けた。
「友達。さらわれてここに捕まってる」待ちきれない、と言わんばかりにヴァンは奥へ向かって走り出した。ラモンもそのあとに続いた。

暗闇の中で怪しい光を放つ魔石は、あまりにも美しかった。ラモンは感嘆して、無防備に魔石の奥へさらに足を進めた。
「これを見たかったんですよ」そう言って、懐から、何かのカタマリを取り出した。
「なんだ?」ヴァンが訪ねた。
「破魔石です。人造ですけど」不思議そうな顔をするヴァンに向けて、ラモンは言葉を続けた。「普通の魔石とは逆に、魔力を吸収するんです。人工的に合成する計画が進んでいて これは、その試作品。ドラクロア研究所の技術によるものです。やはり、原料はここの魔石か・・・・」
ドラクロア、と言う言葉に敏感に反応したバルフレアは「用事は済んだらしいな」と、今度は完全にラモンの進行を妨げ、彼に顔を近づけた。
「あ、ありがとうございます。のちほどお礼を」ラモンははじめて動揺して、お礼、と言う言葉でごまかそうとした。
「いや、今にしてくれ。お前の国までついて行くつもりはないんでね」そういって、さらにラモンに詰め寄った。「・・・破魔石なんてカビくさい伝説、誰から聞いた?なぜ、ドラクロアの試作品を持ってる?あの秘密機関と、どうやって接触した?・・・・・お前、何者だ?」
戸惑うラモンよりも、先ほどから様子がおかしいバルフレアにたいして ヴァンは疑念を抱いた。
バルフレアはいったい何を言っているのだ?
「待ってたぜ、バルフレア」
そこへ、バルフレアが現れるのを待っていたバッガモナンたちが現れた。聞き慣れているが、聞きたくもない声にバルフレアはうんざりして バッガモナンの方に身体を向けた。
「会いたかったぜ?さっきのジャッジといい、そのガキといい、金になりそうな話じゃないか。オレも一枚、噛ませてくれよ」
「頭使って金儲けてツラか。お前は腐った肉でも噛んでろよ」バルフレアに続いて、ヴァンがバッガモナンに攻めよった。
「この野郎!パンネロはどこだ?」
「あぁ?エサはもう必要ないからな。途中で放してやったら、泣きながら飛んで逃げてったぜ」
そのとき、隙を狙っていたように、ラモンがバッガモナンに向けて破魔石を投げつけた。バッガモナンがひるんだ瞬間、ラモンはバルフレアからもバッガモナンからも逃れ、破魔石を拾って、魔石の外へ走り出した。
バッガモナンを振り切り、ヴァンたちは、ラモンに続いた。


  • FF12ストーリー あまい誘惑