生きていた大逆反

ジャッジたちは幸いにも独居房に向かっていた。ヴァンたちは帝国兵を倒しながら、ジャッジたちを尾行した。
魔法陣が開き、独居房に忍び込むと、中から人の話し声が聞こえてきた。
ヴァンはそうっと中を覗き込んだ。
宙に吊るされた檻の中に、常にダルマスカ兵を指揮していた男、兄レックスが尊敬して止まなかった名将バッシュ・フォン・ローゼンバーグの姿があった・・・。
ひどくやせ細り、身体は新しい傷と古い傷とが混在し、顔は腫れ上がっている。彼がこれまで激しい拷問を受けてきたことを物語っていた。
バッシュの前に先ほどのジャッジがいた。二人は瓜二つに見えた。
ヴァンの心に怒りがわき上がった。兄をさんざん苦しめ、卑しめた男が、生きて、今、目の前にいる・・・


ジャッジが独居房を去ると、バルフレアとフランは出口を探すべく、バッシュが拘束される檻の側に近づいて行った。フランが言うには、この下からミストの流れを感じ、外に通じているらしい。
「誰だ」
バッシュは言った。アルケイディスの人間とはあまりにも風貌の違う3人を見て「帝国の人間ではないな。頼む、私をここから・・・」
バルフレアはこれ以上面倒に巻き込まれるのはまっぴらと、「死人とは関わらん主義でね。国王暗殺犯なら、なおさらだ」と、無関心を装った。
バッシュはバルフレアの側で拳を震わしているヴァンに懇願するように言った。
「私ではない。頼む、出してくれ。ダルマスカのためだ」
ヴァンは、その言葉を聞くなり、今までこらえてきた憎しみがいっきに爆発し、バッシュの檻に飛びついて行った。
「ふざけんなよ!何がダルマスカだ!!」その声が、広い独居房にこだまのように響き渡った。「いっぱい死んだんだぞ、お前のせいで!!オレの・・・・お前が殺したんだ・・・」
「やめろ、戻ってくるだろうが」
バルフレアはヴァンを止めに入ったが、すでに遅く、声を聞きつけた帝国兵が独居房に近づいてくる足音が聞こえた。
フランは、ためらいもなく、この檻とともに下に下りようと、バッシュの檻のレバーを引いた。
「落とすわ」
しゅるしゅると、檻と、それにしがみついたヴァンが地下深くに落下して行く。
「・・・空は遠いな」
バルフレアは天を仰ぎ、フランとともに落下する檻に飛び乗った。


  • FF12ストーリー あまい誘惑