目撃者にされた少年

レックスには2つ年下の弟がいて、3年前に流行病で両親を亡くし、現在は弟と2人でダルマスカに暮らしていた。
彼は救国に燃え、ダルマスカ軍に志願し、暗殺計画の阻止作戦に加わっていたが、彼が加入して間もなく国王が降伏勧告を受け入れたため、正規の軍事訓練も受けてなければ、ほとんど戦闘の経験もなかった。
ナルビナ城塞に潜入早々、激しい攻防に巻き込まれて気を失ってしまったのだった。


「・・・大丈夫か?しっかりしろ」
レックスは将軍バッシュの声で徐々に意識を取り戻した。
「だから言ったんだ。足でまといだってな」
少し苛立っているウォースラの声で、ようやく意識がはっきりしたレックスは「レックス・・・。レックスです。将軍」と答えた。
「そうか、レックス。見たところ外傷はない。軽い脳震盪だろう。さぁ、立ち上がるんだ。」
その後も未熟な自分に対し、思いやりの言葉の数々をかけてくる将軍バッシュに、レックスは尊敬の念を覚えていた。
バッシュやウォースラ、他のダルマスカ兵の援護のもと、レックスは命からがら調印式会場に向かった。
会場の扉を開けると、そこには信じられない光景が・・・・
帝国軍、ダルマスカ兵士双方の遺体が無数に転がり、ラミナス国王もすでに命を絶たれていた。
呆然として、完全に無防備だったレックスの背後から誰かが近づいてきた。
思わずレックスは振り返ると、そこにはバッシュが立っていた。そして突然、腹部を剣で刺してきたのだった。 「どうして、あなたが・・・?なぜ、こんなことを・・・?」
バッシュは冷たく答えた。
「陛下はダルマスカを奴らに売り渡そうとした。陛下は売国奴だ」
「売国奴・・・・?」
混乱と絶望、そして傷の痛みでレックスはその場に倒れ込んだ。そして遠のいて行く意識の中で愛する弟を思った。
「ヴァン・・・」
彼は弟の名を呼んでいた。


  • FF12ストーリー あまい誘惑