リヴァイアサン爆沈

ダルマスカ騎士団でバッシュが指揮をとっていた頃、彼は名将と呼ばれ、団の中に彼に勝る者はいなかった。ウォースラもバッシュの剣術に勝ったことはなかった。剣を交わしても勝てる事はない事はわかっていたのだ。
もうこれ以上は戦えない。
ウォースラは観念して、バッシュの前で膝をついた。
「俺は、俺は祖国のためを・・・」言い訳をするようにウォースラが息絶え絶えに言った。
「わかっている。お前は国を思っただけだ」
「ふん。功を焦ったのも事実さ。焦りすぎたのか、お前が戻るのが遅すぎたのか・・・・」ウォースラは言葉を続けながら、アーシェに目を向けた。「俺はもうお任えできん。殿下を頼む」
バッシュは静かに頷いた。
バルフレアとともに、艦載艇を奪い取ったアーシェは うなだれるウォースラに気づき、悲しそうにその背中を見つめた。だが、激しく揺れるシヴァに異常を感じたバルフレアに強く手を引かれたため、導かれるままに艦載艇に乗り込んだ。


リヴァイアサンの測定器に入れられた暁の断片は、測定によって奪われた魔力を取り戻そうと、予想外の反応を示していた。すでにエンジンは限界を超え、大爆発寸前。リヴァイアサンの出力が、急激に低下を始めていた。
「なにが起きたと言うのだ!」ギースも完全に動揺していた。
「破魔石です!戦艦の動力を吸収しています」冷静さを失った研究員が、いろいろなスイッチを何度も作動させようとしていた。
「止めろ!早く止めんか!」ギースの側にいた帝国兵が、声を震わせながら言った。
「やっています!ですが・・・」研究員は、リヴァイアサンの爆発までそう時間がかからない事を察知していた。
艦内はパニック状態で、もう、誰1人として冷静な判断が出来るものはいなかった。
激しい閃光とともに、巨大な戦艦が次々と大爆発を起こしていった。

アーシェたちは、奪った艦載艇で、命からがら、爆発の衝撃をくぐっていった。
「おい、冗談じゃねえぞ」さすがのバルフレアも、衝撃に舵を取られ、ギリギリの状態で船を操縦している。
ようやく、少し冷静になったフランが「ミストよ。ミストが実体化してる!」と、まだ苦しそうに言った。 「ありかよ、そんなの!?」
戦艦群は最期の大爆発をおこした。
しかし、すでにその区域からは脱出していた船は、なんとか衝撃に巻き込まれずにすんだ。
先ほどから、怯えながら爆発の様子を見守っていたパンネロが、 船の残骸の中にきらきらと光るものを見つけた。
「見て!」空に、暁の断片が浮かび上がっていた。
「暁の断片!?」アーシェが心をときめかした。
「拾っていくだろ?」バルフレアは頬を紅潮させるアーシェに尋ねた。
あの石と引き替えに自分の命を守ってくれたアーシェのためだ。バルフレアには、ちょっとの危険も、怖くはなかった。
艦載艇は、暁の断片を回収するために、大きく旋回した。


  • FF12ストーリー あまい誘惑